- 第一巻「アの国の恋」
- 大学生ジョクこと城毅は軽飛行機の免許を取る為、夏休みを利用してアメリカに渡っていた。ところが、ロサンゼルスのフリーウェイをバイクで飛ばすジョクが転倒したその瞬間、彼は異世界に墜ちていった。「バイストンウェル」。そこは、人々の想念が生み出した世界だった...。
<感想>アニメ版よりも、主人公の墜ちた時間がほんの少し早い為、ここから第四巻まではガロウ・ランと呼ばれる魔物の様な亜人間達との闘いに費やされていく。攫われた王女を助けに行く所なんて、正統ヒロイックファンタジーっぽい始まり方になっているなと思った。
- 第二巻「戦士・美井奈」
- バイストンウェルに墜ち、コモン界アの国に迎えられた城毅→ジョクはまるで何かに導かれるかの様にめざましい功績をあげ、伝説の聖戦士として名を馳せた。しかし、英雄となったジョクの前に、竜にまたがった女戦士が立ちはだかる!それはジョクにとって、初めての悲劇の始まりだった。
<感想>ダンバインとして始まっていなければ、この巻で完結しても十分読むに耐える内容だった。全く、読む方にしてみれば、悲劇も喜劇も同じだけの価値がある。
- 第三巻「ガロウ・ラン・サイン」
- 聖戦士ジョクはオーラバトラー「カットグラ」の慣熟飛行中、蛮族ガロウ・ランに遭遇した。コモン界へのガロウ・ランの進行が激しくなっているのだ。そして、偶然カットグラを手に入れ、その恐るべき力に興味を持った首領ギィ・グッガは、覇権をもたらすであろう技術を手に入れる為に策謀を廻らせる。
<感想>恐ろしい程の欲望と、ガロウ・ランとは思えない知謀を持つ(ガロウ・ランにしてはという程度だが)ギィ・グッガによる覇道への道が始まる巻。ドレイク・ルフトはこの頃、覇道の使徒では未だなく、だからこそ、ジョクは彼に力を貸している。ガロウ・ランとコモン人と。その何処に違いがあるのか?
- 第四巻「ギィ撃譲」
- オーラ兵器カットグラとドーメを得たギィ・グッガは新たな強獣部隊を編成し、着々と戦備を整える。一方、アの国王ドレイクもまた、ガロウ・ラン掃討を目指し全軍に総力戦を宣言した。今や聖戦士の称号を贈られたジョクは全軍の注目と期待を一身に集めカットグラで飛翔する。
<感想>この巻で死ぬはずのギィ・グッガ。だが、その怨念はドレイクの心を蝕み、覇道へと突き進ませて行く。何人もの地上人がバイストン・ウェルへと降りてくる中、それでもジョクは聖戦士として行動する。
- 第五巻「離反」
- ガロウ・ランとの戦いから三年、ジョクは突如アの国から離反する事を決意した。国王ドレイクの覇権主義に対する、聖戦士としての解答だった。ジョクは小国ミに身を寄せ、国王ピネガンと合力する。それこそ、バイストンウェルを、ひいては地上界をも巻き込む、戦乱の時代の幕開けだった。
<感想>遂に聖戦士は決断し、大国となったアの国に弓引く事になる。ゼラーナこそ出てこないものの、この巻辺りからアニメ版とほとんど同じ進行になってくる。チャム登場。最初からジョクのお供になるというのも、アリサという存在があったからだろう。
- 第六巻「軟着陸」
- ミの国に合力し、ドレイクに戦いを挑む聖戦士ジョク。激しい戦闘の最中、敵としてジョクの前に立ちはだかる旧友バーン、そして「ガラリア・ニャムヒー」。三つの情念が激しく交錯し火花を散らした時、オーラ・ロードは再び開き、三人の騎士たちはオーラバトラーもろとも、地上世界に放逐された...。そこはジョクの故郷。そして、機械の世界。
- <感想>地上編。アニメ版では余り表に出てこなかった感のあるガラリアだが、小説版ではヒロインに近い扱いになっている。アリサがいた為、思い切った行動には移せていない様だが、それでもジョクの祖母と通じさせた心は、それこそバイストン・ウェルと地上界の関わりを感じさせた。だが、生き残るのはバーンだった。それが運命か?
- 第七巻「東京上空」
- 突如地上界に放たれたバイストン・ウェルの騎士たち、バーン、ガラリア、そして城毅。東京は未曾有の大パニックに陥った。平和を貪る地上人にとって、彼らはやはり招かれざる訪問者だったのだ。無理解と排斥。利用する者、される者。打算とエゴ。そして失望...。地上世界はもはや、聖戦士の帰るべき場所ではなかった。
<感想>地上編はここまで。原点回帰のストーリーの多いファンタジーの中で、やはり聖戦士ダンバインも又、その一つになると思う。進みすぎた科学とバランスの取れていない精神。もう何十年も言われ続けていて、なおかつ未だにどうする事も出来ない人間にとって、読んで良かったと思わせる内容だった。聖戦士ですら、どうする事も出来ない問題は、地上にも多すぎた。
- 第八巻「マシン増殖」
- 東京に突如現れた三機のオーラバトラー。それは産みの親である地上文明への、バイストン・ウェルからの警告だった。しかし、人類はいまだ未熟で狭量すぎたのだ。再びオーラロードが開き、悲運の騎士達は想念の国へ呼び戻された。そしてバイストン・ウェルで聖戦士ジョクの帰還を待っていた者は神の代理人ジャコバ・アオンだった。
<感想>地上を見て戻ったとしても、ピネガン王一人救う事も出来ない予感からか、戻ってこれたのもチャムのおかげにするジョク。聖戦士への過剰な期待に応える為、カットグラUとジャコバの剣で、地上人城毅は戦い続ける。
- 第九巻「オーラ壊乱」
- ラウの王フォイゾンはアの国との開戦を決意した。地上世界の二大国の戦争シュミレーションさながらにコモン界は破滅への途を疾走する。聖戦士として再度バイストンウェルに入ったジョク。今はドレイクとの戦いに加わるしかない...。しかし、ジョクは己の力の限界に苛立った。
<感想>小説版でのショット・ウェポンはアニメ版と同じ考え方だったのは序盤だけだったようだ。彼も又、ジョクと同じく自らの力に懐疑的であって、この辺りでジョクと会った時に、お互いにバイストン・ウェルによって動かされていたと思う。そんなショットにジョクは苛立つが、人間とはこの様(ショット)な物なのだと思う。自らの力を過信すれば、ドレイクの様にもなるだろう。それは自らの可能性を信じる者は、と言い換えてもいいかもしれないが。
- 第10巻「重層の刻」
- ザナドの駆る「ガベットゲンガー」の攻撃に傷ついたジョク。しかし聖戦士としての義務感が、彼を三度戦いの中へと引き戻さんとしていた。見かねたアリサとリムルは戦争そのものを終結させつ為に、極秘にドレイク、そしてルーザの元へと赴いた。そして、彼女らは絶望する。そこで彼女らが見たものは、アの国の人民全てのオーラを吸い込む様な巨大戦艦「ウィル・ウィプス」だった......。
<感想>戦争は男が始める物なのだそうで、だったら終わらせるのも又、男であるべきなのだろう。狩りをしていたからなのか、動物としての本能か、一度始まった戦争は人一人の命では止まらない。だから、バイストン・ウェルは嘆くのか、全ての命はオーラマシンによって、集約され始めた。
- 最終巻「ハイパー・ホリゾン」
- 愛するジョクのため父ドレイクの侵攻を阻止しようとするアリサの願い虚しく、三国の巨大戦艦は全てのオーラを吸収するかの様に動きだし、コモン界の戦闘は凄惨を極める。聖戦士として生きる運命に導いた人々の意志を体中に感じながら、ジョクは混戦を断つべく、最後の戦いへ身を投じて行くのだった...。
<感想>最終巻。なのだが、コモン界がああなって終わりなのはともかく、ジャコバ達はどうもなっとらんのが、気にくわない。まぁ、神様なんてのはああいった手合いなのかも知れないけれど...。この小説を読み終えて、ふと空を見上げてもしも流れ星が見えたなら、青空に虹がかかっていたならば、それはもしかしたら...?
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